ハル

僕の長かった冬も終わってようやく春が来た。この冬の間にもずいぶんといろいろなことがあったけれど長い間僕の中で何かが雪解けせずにいた。でも僕は昨日突然遠足に行くみたいに朝早起きをして電車に飛び乗り、何かに突き動かされるように春を捕まえにいった。きっと春はそのようにしてしか来ないもので、僕もそういうことは分かっていたはずだったのに冬眠の暖かさに甘んじてしまって自ら次の一歩を踏み出せずにいたのだ。でも結局そのようにして春は僕の所にも来て、僕は翌日の苦しみも憶することもなくその異常に真っ赤なラーメンを食べた。