今年も無駄に300枚くらいアルバムを聞いた僕が、今日から1日1枚2014年の名盤を10枚くらい紹介していく。10枚程度に絞ったので絶対買っても後悔させないと断言しておこう。ジャンルは洋楽ロック/エレクトロの周辺。結果的に結構マニアックなチョイスになったかも。J-POPは残らなかっただけ。

簡単に総括しておくと、一昨年くらいまでいわゆるチルアウト系というゆったりしたエレクトロと宅録っぽい凝った音作りのインディーズポップ、ロックはポストパンク系が全部死んでパンクリバイバルという感じのストリームだったが、去年あたりから混沌としてもうすっかりメインストリームが見えなくなった。

混沌としている理由のひとつは音楽媒体とメディアが多様化しすぎたからと思う。CDが売れなくなって新しい優秀なバンドがbandcampなどに埋もれていて、音楽への出会いが宝探しみたいになっている。掘り下げれば下げるほど面白いバンドが出てくる状態になっていて、全部を俯瞰するのが難しい状態。

もうひとつの理由としてはベタなリバイバルをやる新人バンドが増え、逆に飽きられたくないベテランが意欲的にものすごく時代に沿った音を出すようになったことで、今年らしい音が選びにくくなった。試聴機で今年っぽい!と思ったら80sの再発みたいな状態。

とはいえ傾向としては引き続きボーカルにはどのバンドもリバーブをかけてほわーんとしているし、ギターも歪みがち。それと去年まではもう少し6-70sの影響が大きい気がしたけど、今年はエレクトロもロックも80sの影響が強い印象。総じるとネオアコっぽい。

当然新人の音にはバイアスかけて聞くけど、結果的に新人からCD出してない人から結構なベテランまで幅広くなった。結果的に一番多いのは3-4枚目。
ということで2014年買って損しない名盤(盤として買えないもの含む)。だいたいアルファベット順(アーティスト名)で。

So Long See You Tomorrow

So Long See You Tomorrow

Bombay Bicycle Club / So Long, See You Tomorrow
UKのインディーズロックバンドの4枚目(全英1位)。ギターポップさを削ぎ落とし、知的で多彩な音作りで洗練された感じの1枚。世界を旅した気分になれるような音。この1枚でUKを代表するバンドになったと思う。

Someday World [輸入盤CD] (WARPCD249)

Someday World [輸入盤CD] (WARPCD249)

Brian Eno & Karl Hyde / Someday World
ブライアン・イーノアンダーワールドのカール・ハイドのコラボプロジェクト。この二人にしてエレクトロポップとポストロックの中間のようなまさかのポップミュージック。知的で楽しい。

Here & Nowhere Else

Here & Nowhere Else

Cloud Nothings / Here And Nowhere Else
オハイオ出身ガレージパンクの3枚目。ここ数年のパンクリバイバルに乗っかって去年ブレイク。とにかく速さで押してくる1枚。

V2.0

V2.0

Go Go Penguin / V2.0
アノトリオfromマンチェスターっていう看板が相応しい音の今年頭にデビュー新人の2nd。JAZZでありながら音のつくり方はエレクトロっぽくて酔える。


Chorus

Chorus

Literature / Chorus
フィラデルフィア出身4人組の2枚目。ローファイでとことん陽気なギターポップ。現代のギターサウンドをポップに突き詰めるとこうなるみたいな音。


Love Letters

Love Letters

METRONOMY / Love Letters
UKブライトン出身の3枚目。元々70年代後半から80年代前半のテクノポップという感じのサウンドだったが、若干さらにレトロ方向にシフトさせた捨て曲なしの1枚。


Disgraceland

Disgraceland

The Orwells - Disgraceland
シカゴ発のロックンロール。毎年いるけどこういうSTROKES直系のバンドに元気があるのは嬉しい。NYのロックより大陸の匂いがするのは土地柄か。


They Want My Soul

They Want My Soul

Spoon - They Want My Soul
テキサス出身、キャリア20年のオルタナ〜インディーロックバンドの8枚目。4年前くらいにNYでライブ見た時からじわじわ来てたけど8枚目にして化けた感。


The Sunshine Underground

The Sunshine Underground

The Sunshine Underground - Sunshine Underground
UK出身ポストパンクバンドの3枚目。メディア誰も取り上げてないけどこれはすごい名盤。BPM下げてロックバンドっぽさを削ぎ落としてめちゃくちゃ洗練された。



http://tvgirl.bandcamp.com/
TV Girl – French Exit
レーベルに属さない音楽の売り方を貫くサンディエゴ出身の男女二人組、待望のデビューアルバム。レトロでチルウェイブ以降のエレクトロポップ。1ドル以上で買えるので是非。


それ以外にも良かった30枚。

オールウェイズ

オールウェイズ

pom pom

pom pom

PUDDINGHEAD

PUDDINGHEAD

Physical World

Physical World

Turn Blue

Turn Blue

After the Disco

After the Disco

Cheatahs

Cheatahs

Colourist

Colourist

Drowners

Drowners

Foxygen & Star Power

Foxygen & Star Power

Weird Little Birthday

Weird Little Birthday

Super Class [12 inch Analog]

Super Class [12 inch Analog]

Tied to a Star

Tied to a Star

PEACH KELLI POP 1

PEACH KELLI POP 1

eye cue rew see

eye cue rew see

ロスト・イン・アルファヴィル CD

ロスト・イン・アルファヴィル CD

Rivers That Run for a Sea That Is Gone [Analog]

Rivers That Run for a Sea That Is Gone [Analog]

Rush Midnight

Rush Midnight

THE VEIL [歌詞・対訳付き]

THE VEIL [歌詞・対訳付き]

Look How Fast the Heart Can Break [Analog]

Look How Fast the Heart Can Break [Analog]

St. Vincent

St. Vincent

Alium

Alium

It's Album Time

It's Album Time

Taka Come on

Taka Come on

Lost in the Dream

Lost in the Dream

Present Tense

Present Tense

With Light & With Love

With Light & With Love

http://horsebeach.bandcamp.com/
http://www.colorreporters.com/

建築業界のその後

インターネットのサイトに素材の下代がガンガン上がっちゃってるのを見ると、もう分離発注してしまえやって思う。


一番難しいのだけど、あとは職人さえ抑えられればできる。


職人.NETみたいなのがあると、小中堅どころの建設業界はたちまち破綻するはず。


実際に今の現場は見積が合わず、結局いろいろな製品を僕がネットで発注するみたいなことが起きた。デッキ材に至ってはAmazonで発注した。仲介業を滅ぼせるような能力を建築家が身につけるような時代になったのかもしれない。

the Bohemians / 恵比寿リキッドルーム

山中さわおが来てた。
山形から東京へ出てきてよかったというボヘミアンズ。感動しました。さわおさんが見に来ていて、僕がなんでこの若いコたちを気になるか分かった気がする。
すなわちひねくれたロック魂とポップミュージックに対する限りない憧れでできている。

ストレイトストーリー / デヴィット・リンチ

ストレイト・ストーリー リストア版 [DVD]

ストレイト・ストーリー リストア版 [DVD]

ジョンディアの芝刈り機が欲しいという施主のために見返して、アメリカのド田舎が舞台なんだけど、見ず知らずのおじいさんが困っているのにさっと手を差し伸べられる社会の包摂 性は、ある程度の時間の余裕がそれを支えていると思って、これに対して「暇」という言葉の持つネガティブさが一般的なものだとすると悲しい。
「忙しい」でも「暇」でもない、やらなければいけないことは十分にあるけれど、貴方に手を貸すくらいの余裕はありますよ?と言うのにふさわしい言葉があれば、社会はもう少し寛容に、豊かになるんじゃないかとふと思う。

自転車と都市

自転車の移動を前提に都市を見直すと何が違ってくるかってまず決定的に建物がどっち車線に建ってるかで意味合いが違ってくるよね。たとえば坂があると下り 側と上り側でその横を走り抜ける自転車のスピードは30kmくらい違うから、その辺りで都市の構造が全然変わってくるだろうね
そもそも道路に建物のファサードを正対させる方法ってモータリゼーションに伴って変わっていくべきことだったのではないか。

音楽と贈与

こういうのは市場原理主義(等価交換)が社会を悪くするひどい例だと思う。自分のところで抱えているアーティストが今まで違法ダウンロードの音源を全く聞いたことがないとでも思ってるのだろうか。
@NEWS_0 エイベックスのホームページがひどい件  開いただけで犯罪者扱い http://bit.ly/U9TW7X

最近の若いアーティストの音を聞いていると、本当に10代かって思うくらい音楽を知っている。これは明らかにネットにたくさんの音源がアップされている影響だと思う。
若い人達がこういう法律の施行によって音楽離れしてしまうことの方が、音楽業界にとってはマイナスだと思う。そういうものは簡単に数字には現れてこないけれど。

内田樹さんのいう「私は贈与を受けた」と思いなす能力がまさに求められていると思う。僕もネットで音を聞くことはあるけど、そうやって知った中でまさしくああこれは自分に対する贈り物だなあと思うものはちゃんと買っているし、あるいはライブを見に行く。そういう人は多いと思う。


相手に贈与だと思ってもらう方法として、自分の系譜を明らかにするというのはひとつの手段ではないかと思う。仮に「はっぴいえんどくるり直系」と謳えば2世代半くらいの人がお?って思うはずだし、若い人も逆にじゃあくるり聞いてみようとかなるわけだから。


音楽業界で贈与を続けたがためにそれが売上につながったという稀有な例がある。結成26年目のthe collectors。無料のpodcastを毎週続けてそれが月間20万ダウンロードまで達し、その影響でファンが増え、最近はライブも売り切っているしCDの売上も上がっている。
http://studiomog.ne.jp/scrap/bukuro24/

建築の大転換/中沢新一 伊東豊雄

建築の大転換

建築の大転換

コルビュジェ重農主義だと感じることがあります。伊東

交叉(キアスム)とは、主体と客体が相互に交叉して一体になってしまう、そういう空間がつくられるわけです。最初に言いだしたのはヴァレリーですけれども、それを哲学者のメルロ=ポンティが発達させました。中沢

海は知的ではないんだよ。藤森

二十世紀建築は自然と歴史を外部に置いて建築をつくる論理を立ててきた。究極的には数学をもとにした建築。自然を批判したわけでも、興味がないと言ったわけでもまったくなくて、ただ触れなかった。触れたとたんにおそらく自分たちの論理が崩れることを、二十世紀建築の担い手たちは敏感に分かっていたからに違いない。自然と歴史の二つが二十世紀建築と全然違う原理だとわかっていた。藤森

今のグローバリズムの原則をざっと整理するとこうなります。
欲望する個人が出発点である。
経済活動の外部性、すなわち自然のことは無視する。
生産は瞬間的に行われる。
この原則、ほとんど近代建築の原則と同じです。中沢

日本も含め、人間の文明は第一種交換(等価交換)を原理として動いてきました。第一種交換から必然的に貨幣が発生しましたし、この貨幣は中小物ですから、この抽象物を扱ってゲームを行うことが可能になってきます。こうしてグローバル資本主義にいたりました。一方、エネルギーを取り出す面においても、本来生体圏の外部にある核エネルギーを核反応という形で取り出す形態に依存してきました。しかし、この両方ともが、生態圏内にある生物である人間が本来あるべき形から外れているのは明らかです。
グローバル資本主義のあり方、原子力エネルギーのあり方から撤退し、本来あるべきエネルギーの形態(中略)、生体圏の内部からエネルギーを取り出していくエネルギーへの移行は必然であり当然のことです。
また、経済システムがそれに合わせて変動を起こすならば、第一種交換だけに依拠したグローバル資本主義を脱却して、第二種交換である贈与関係を組み込んだ経済システムへ移行していかなければならないことも、また必然であり当然なのです。中沢


血痕は入れ歯と同じである、という話があります。世の中には「入れ歯が合う人」と「合わない人」がいる。合う人は作った入れ歯が一発で合う。合わない人はいくら作り直しても合わない。マインドセットの問題なんです。
自分の口に合うように入れ歯を作り替えようとする人間はたぶん永遠に「ジャストフィットする入れ歯」に会うことができないで、歯科医を転々とする。それに対して、「与えられた入れ歯」をとりあえずの与件として受け容れ、与えられた条件のもとで最高のパフォーンマンスをするように自分の口腔中の筋肉や関節の使い方を工夫する人は、そこそこの入れ歯をもらったら、「ああ、これでいいです。あとは自分でなんとかしますから」ということになる。そして、ほんとうにそれでなんとかなっちゃうんです。中沢


「たちが悪い」と思ったのは、この「知っているくせに知らないふりをして、イノセントに驚愕してみせる」ということそれ自体がきわめてテレビ的な手法だったということです。中沢


おのれの無知や無能を言い立てて、まず「免責特権」を確保し、その上で、「被害者」の立場から、出来事について勝手なコメントをする。
でも、僕はメディアが「庶民の代表」みたいな顔つき、言葉遣いをしてみせるのはおかしいだろうと思うのです。むずかしい大学を出て、たいへんな倍率の入社試験に合格して、自在に現場を飛び回り、潤沢な第一次情報を手にしているジャーナリストが、責任逃れをするときに「無知や無能」で武装するというのは、ことの筋目が違うでしょう。中沢



市民の仕事はただ「文句をつける」だけでよい、と。制度の瑕疵をうるさく言い立て、容赦ない批判を向けることが市民の責務なのである、と。そういう考え方が社会全体に蔓延したことによって、医療も教育も今、崩れかけています。中沢


週刊誌や月刊誌の記者の場合だと、他社の雑誌記事を示して、「世間ではこんなことが起きているらしいっですが…」と、具体的現実そのものではなく、「報道されているもの」を平気で第一次資料として取り出してくる。僕はこれがメディアの暴走の基本構造だと思います。中沢


書籍というのは「買い置き」されることによってはじめて教化的に機能するものだと思っています。僕たちは「今読みたい本」を買うわけではありません。そうではなくて「いずれ読まねばならぬ本」を買うのです。それらの「いずれ読まねばならぬ本」を「読みたい」と実感し、「読める」だけのリテラシーを備えた、そんな「十分に知性的・情緒的に成熟を果たした自分」にいつかなりたいという欲望が僕たちをある種の書物を書棚に配架する行動へ向かわせるのです。中沢


メディアの危機に際会して、僕がいちばん痛切に感じるのは、この「これは私宛の贈り物ではないか?」という自問がどれほどたいせつなものかを僕たちが忘れ始めていることです。この自問の習慣のことを、かつてクロード・レヴィ=ストロースは「ブリコルール」という言葉で説明したことがあります。「ブリコルール」というのはフランス語で「日曜大工」とか「器用仕事をする人」とかいうことですけれど、要するに「手元にある、ありあわせものもので、なんとか当座の用事を間に合わせてしまう人」ということです。資源の乏しい環境に置かれた人間は「ブリコルール」的に生きる他ありません。中沢



人が「無意味」だと思って見逃し、捨て置きそうなものを、「なんだかわからないけれど、自分宛ての贈り物ではないか」と思った人間は生き延びる確率が高い。
この後期資本主義社会の中で、めまぐるしく商品とサービスが行き交う市場経済の中で、この「なんだかわからないもの」の価値と有用性を先駆的に感知する感受性は、とことん磨り減ってしまいました。
「私は贈与を受けた」と思いなす能力、それは言い換えれば、疎遠であり不毛であると見なされる環境から、それにもかかわらず自分にとって有用なものを先駆的に直感し、拾い上げる能力のことです。
ことあるごとに「これは私宛の贈り物だろうか?」と自問し、反対給付義務を覚えるような人間を作り出すこと、それはほとんど「類的な義務」だろうと僕は思います。中沢