インスブルック

crz_joe2004-07-26

インスブルックのユースは朝食抜きだと10ユーロというスイス上がりの僕からしたら信じられないような安さで、高物価地域をぬけた安堵の眠りから覚めると昨日の悪天が嘘のような日差しで、僕は洗濯を忘れてかなりにおう靴下をはいて早速町へとくり出す。
町からどれくらい遠いだろうと懸念していたそれは何と町の中心からも見えるロケーションで、僕は凱旋門と旧市街の中心を延長した軸線上の小さな山のいただきにそびえ立つ銀色の流線型に向かって歩く。ヴィトラ消防ステーションで始まった短い旅の終着がまたしてもザハハディドという偶然で、僕はまた高いところから世界を見下ろすことになった。
この建物はジャンプ台と展望台とカフェがミックスされたプログラムがものすごく面白くて、僕はたまたま練習中だった日本人選手とその他大勢の観光客とともにエレベーターに乗り合わせる。見ると腕とかさすがにガリガリに細い。(後で調べたら宮平秀治と吉岡和也だったと判明)
遥か下に広がるインスブルックの町並みとその更に後の山並を背景に、彼等が躊躇することなく空へ消えていく姿を眺めながら、僕はこの旅で唯一のビールを楽しんだ。
そして僕は再び駅に戻り、この旅最後の列車に乗り込む。
アルプスの最後の山並を越えてミュンヘンに戻るためだ。3000m級の山並の間を列車が抜けていく時開いた窓に肘をかけてファインダーをのぞく僕は座席にひざを着いて外を眺める少年のときのような気持ちで。