with ipod

今年初のゼミを終えた僕は教務課へ行って在学延長届けの用紙を受け取る。研究室に帰ってそれをいつも自分が座っている机の後ろに貼付けると少し肩の荷が下りた気がした。


 しばらく机に向かった後、コートの左のポケットに買ったばかりのipodを、右のポケットに角田光代の文庫本を突っ込んで手ぶらのまま研究室を後にする。すっかり葉の落ちた木々の下、緑が丘の坂を下りながらライブラリをmoodysに選択すると流れてきたのはBEGINの「恋しくて」で僕は少しだけまた切ない気持ちになる。駅に着いてホームの階段をあがると、そんな切ない思いもハーモニカのイントロからダニエル・ボウズの渋い声にかわり、少しだけ前を向きたい気分になった。ところがそんな思いもつかの間、大岡山で目黒線に乗り換えて席に着くと聞きなれたイントロはcreepをうたうトム・ヨークの声にかわって、僕は3段落ちかよと思いながら次の曲を聴く前にそのまま眠りに落ちた。


 リアム・ギャラガーがWonderwallを歌う懐かしい声で僕は目が覚める。駅の改札を出るとスーパーに寄り道してハイネケンを1本手にした。それを空けながらゆっくりと家路に向かうとルイ・アームストロングがwhat a wonderful worldを歌いはじめる。僕はエレベーターで15Fに上がり、遠目に光る街の灯りを眺めながら曲が終わるまでの間僕はそれを楽しんだ。