サヨナラ花粉のない世界

空気中の成分は大雑把に言うと窒素が80%で酸素が20%だと僕は信じていて彼らによる侵略がこれほどまでに進行していることなどは実質全然気がついていなかった。勿論僕の周りにはその事実にとうに気づいている人もたくさんいることを僕は分かっていたし、彼らがその事実に気づいてしまったことでどれだけ苦しい思いをしているかもたくさん見てきたつもりだ。
そしてついに昨日を境に僕の脳にもはっきりと空気中に漂うそいつらの存在を完全に認知できるようになった。僕は防塵マスクを片時も手放せなくなり、前の日にはジャンベ代わりに裏返して叩いていたゴミ箱やクリネックスネピアと仲良しになった。街中で何かを配る人たちに大変友好的な感情を抱くようになった。新幹線ほどのスピードで僕の体内から何かが吐き出されるたびに僕はもの凄い疲労感を感じた。顔の変なところが筋肉痛になった。
家に帰ると僕は着ていた物を全て洗濯機に放り込んで風呂に入って湯船に顔を沈めた。そしてこれからマスクを常にすることを考えたら、おでこは露出されるべきだろうと思い立ち、髪をばさばさと切った。


でもたのむから君たちの性行為に僕を巻き込まないでくれ檜。