富士登山

夜の8時、新宿発のバスに乗り中央フリーウェイを行く。
バスは半分以上が外国人ツーリストで、なんだか日本人の多い観光地の長距離バスに乗ったみたいだ。
隣にいつも通りkrvが座ってるせいもある。
僕は昼間のんびりと寝ているはずなのにいつのまにか眠ってしまっていた。
バスを降りると既にジャンパーを羽織らなければいけないくらい寒く、僕らは暗闇の中、懐中電灯の明かりを頼りに颯爽と歩き始める。
とりあえず側を歩いていたドイツ語を話す二人組に話しかけ、4人連れで登山をはじめる。
僕らの視界には目の前の道と少し上の方の小屋の明かりしかなかった。
そんな中おしゃべりをしながら一歩ずつ砂を踏みしめて登っていく。
結構修行に近いと僕は思った。
歩くことに集中し始めると何となく結局krvとまた二人になって、ものすごいペースで上がる。
ときどき立ち止まって休憩をいれては満天の星空を眺めた。
流れ星を2つ数えるたびに僕らは休憩を終えて再び登り始める。
途中で8合目すぎで懐中電灯の明かりが切れて立ち往生しているアメリカンチャイニーズを拾って3人で登る。
彼は8時半に5合目を出たと言っていたから僕らは8合目まで2時間も早く登ってきたことになる。
延々と全然終わりそうにない、いろは坂のようなドンキーロードをゆっくりと急ぎ足で登っていく。
でも終わりは突然やってきていて、気づくと僕らはいつのまにか頂上にいた。
日の出までまだ2時間あって、そこからの時間は本当に辛かった。
僕らはありったけの服を着込んで、火をたいて湯を沸かし辛ラーメンを食べて
それでもまだぶるぶる震えていた。
もう無理と思った午前4時に、頂上の店がいっせいに開店し九死に一生を得た。



太陽ってなんて暖かいんだろうと僕は思った。
雲の上を少しずつ下りながら、服を脱ぎながら。



朝の9時には5合目にいて昼の2時には新宿に戻り、2時間くらいkrvと当てのない買い物に出かけた。
それから帰って風呂に入り砂だらけになった体をごしごしあらい、キンと冷えたビールを飲んで
そのままソファに横になって少し眠った。