脳内就職

土曜なのに研究室へ赴く。
ひとつは発作的に海外の事務所に送りつけるポートフォリオをつくるためで
もうひとつは発作的に失われてしまったipodの中身を取り戻すためである。
6000曲を超える曲を整理していると、ロック雑誌の編集者としてもやっていけるんじゃないかという気になってくる。
というよりはむしろそっちのほうが天職かもしれないとすら思えてくる。


ipodのデータ整理の傍らポートフォリオの印刷に追われていると
隣では最近猫を飼い始めたtniが猫と戯れていた。
tniは机の下からLANケーブル用に机の天板にあいた丸い孔ごしに指を出して、机の上の猫がそれにもの凄い勢いでとびついていた。
まるで砂場に掘った深い穴の底をさぐる子供のように、片腕を奥まで突っ込み、ときどきは謎の正体を探るべく顔まで突っ込んでのぞき込んでいる。
かと思えばふとした表紙で転がってきた色鉛筆にも過剰に応戦し
それをみる限り猫はものが何かであるよりも、それが動いているという状態の方に先に反応しているようだった。
ところがしばらくtniが指を出さないでいると、猫は遊んでくれよと言わんばかりに彼の右腕に机の上から飛びついて
僕らは分かってたんかい。と思わず関西弁で突っ込んでしまった。

きっと35の僕は猫と二人暮らしで
家へ帰って前日のライブリポートを書きながら新しいCDを順番にチェックしている。
そういうパラレルワールドがあっても悪くない。

分岐点に立っていつも思うのは、いろいろある可能性をひとつに絞らなければならない寂しさの方だ。
何をやったって並の人よりはうまくやれてしまうのが僕のいいところでもあり欠点でもある。
だからうまく転がりはじめるまでサイを投げ続けるのがいいのかも知れない。