少年の夢と筋肉の記憶

よく晴れた朝の10じ過ぎ。

多摩川丸子橋付近にkrv,uuu,sgyと4人で集まって、対岸の風景を眺めながら黙々とペダルを踏み続ける。
普段krvやuuuほど自転車に乗り慣れていない僕にとっては、はじめのうちは結構しんどかった。
それでも二子玉、狛江、調布、府中と部分的に知る多摩川の風景を、25キロ近い時速で紡いでいく。
最高に暑い日で、いくら水を飲んでもトイレに行きたくならなかったが、
体中が塩をふいて、僕らはほとんど塩分と水分でできているみたいになった。
川辺という贅沢だけど少し反社会的な空間を周辺の建物がどう利用しているかを見るのが楽しかった。

府中を過ぎた辺りで、中学生の時に毎週末走っていた土手の上を通った。
前の自転車との距離が離れたり縮んだりするのを見ていると、ほとんど陸上部の夏合宿みたいになった。
しばらく行って立川と多摩センターを結ぶモノレールを超えると、多摩川は全く見知らぬ川になった。

僕らは結局青梅の近くまでこいで、奥多摩でとれたわさびでそばを食べて引き返した。
それが出発地点から50キロくらいのところで、僕は青梅に住んでいた親友のことを思い出してゾっとした。
途中パンツ一枚になって川に飛び込んだり、釣り糸をたらしたりしながら、再び来た道を戻るようにペダルを踏んだ。
僕らは往きの道中で落としていったくだらない話をすこしずつ拾い集めるようにしてこいだ。
慣れない自転車を何十キロとこいで重いはずの体は、僕の予想に反して動きが良くなっていった。
東京にあって信じられないような真っ暗になった土手の上を、僕らはものすごいスピードで走り抜けた。
今まさに子供である最後の時間にいるのだとkrvが言った。