エターナル・サンシャイン/ミシェル・ゴンドリー

もし脳の記憶の一部を消去できたら、僕なら何を消すだろうか。
幸いにしてここ数年の僕はあまりよくない記憶力に救われて楽しく生きている。
そういえば鬱の症状に記憶力の低下というのがあるらしいけど
それってそもそも人間を正常に保つためのある種のカタルシスではないのかとふと思う。
2年ぶりに彼女ができたときに僕も全く同じことを思ったのだけど
記憶がなくなってしまっても誰かに何かに惹かれ合う衝動の本質には変わりがなくて
気づくと同じようなことを繰り返している人間の本質を
この映画はうまく描いていると思う。
そして感性というものはかくも主観的でそのときの自分の感情に左右されてしまうものだということを
通して、僕はひとときの感情に流されてしまう自分の脆さを深く反省する。
とにかく賞をもらったおかげで脚本にばかり目がいってしまうところだけど
本当は映画として、ひとつの消去されていく記憶に抵抗しようとする意識を
記憶のサンプリングとして非常にうまく映像化しているところがすごくいい。