東京物語/奥田英朗

東京物語 (集英社文庫)
70年代後半から80年代の1人の青年の東京での日常の生活を描いた私小説的青春小説。当時の時事ニュースが主人公の日常生活に重ねられていく。実際に体験したことがないのに懐かしいなと感じてしまうのはやはり僕らが今その後の社会に生きているからなのだろう。最近僕はこうした曖昧な記憶を基盤とした郷愁感のようなものにものすごく惹かれるのだけど、たとえば昔の町並みがどうであったかという実際的な記録よりも、そこにどんな空気があったのかという曖昧な記憶の方をデザインできるといいと思う。