Dolls/北野武

Dolls [ドールズ] [DVD]
Dolls」を見た。自分の出世のために婚約者を捨てた主人公とそれが原因で自殺未遂を起こし人形のよう になってしまったその元婚約者の旅を軸に、同様に生(life)に強度を見出せなくなってしまった2人の人間のショートストーリーを絡めて描いた作品であ る。主軸に添えられた2つのストーリーが幸せな死を持って終わることで、北野武は死と生の価値観の反転を描くことに成功し、悔いのあまりある主人公たちの 旅の結末を美しく描ききっている。ここで使われた「死」という救いの描写は、北野のモダン世代の監督としての「終わりなき日常」への嘆きなのかもしれな い。伝統芸能をひとつのモチーフに使うことで、明らかに世界の舞台に押し売りみたいなやり方は多少興ざめだが、僕も割とモダンな人間だし四季を描いた絵も きれいだし構成の妙もあってよかった。