フライブルク〜ウ゛ァイルアムライン

crz_joe2004-07-20

予定よりも30分遅れて起きたので顔を洗うのも忘れて家を出て、まずはドイツの南西に位置するフライブルクという町へ向かう。久々のバックパックが折れっぱなしのあばらに少ししみるが、僕はそいつを抱えたままゴシックの教会塔をのぼる。見下ろすと教会の前の広場に市場やカフェのパラソルが色とりどりに咲き乱れていて、僕はいつの間にかあばらの痛みと仲良く共存できている自分に気が付く。
フライブルクから各駅停車で更に南下してスイスの手前の町ヴァイルアムラインで下車。この町のヴィトラ社が抱えるゲーリーとザハが今日のハイライトだったのだが、駅を降りても駅舎すらなく少し途方に暮れかける。
しかしこの辺はドイツがギリシアと違うところで、ちょっと町をあがったところにインフォメを発見して一安心。僕がヴィトラ社の建物を見たいのだと告げると、お姉さんはミュージアム以外を見るツアーは残念だけど今日はもう終わってしまっていて、でもこの道をいくと消防ステーションが近くに見えるわよ、などとかなり親切に教えてくれる。もらった小さな地図にはフランスとドイツとスイスの国境が描かれていて、朝から曇りがちだった空にも太陽がのぞきはじめた。
白くてうねうねのゲーリーは思った以上に格好よくて、複雑な形態が影の濃淡だけを真白な壁に映し出していた。雨を流す屋根面だけが素材が違うのも分かりやすくて好きだった。
美術館の入り口で聞いてみると、安藤忠雄の会議室だけなら今からでも見学できると言われ、せっかくなので金を支払い参加することにした。93年の彼の海外初作品という小さな建物だったが予想以上に良かった。小さい分影と光の落ち方が空間に与える印象が強くてよかった。
ミュージアムに戻ると今度は今からザハの見学があるわよと言われ、おいおい聞いてないよと思いつつさらにお金を払う。なんだか通販の教材販売みたいだ。シザとグリムショウの工場の間に現れたザハはやっぱり異常にかっこ良く、ほとんど垂直の存在しない世界は同じデコンでもリベスキンドより全然空間的に迫力がある。その質はFOAの客船ターミナルにも近かった。もともとは消防署だったというが、西を向いた大きなシングルガラスの窓には日除けひとつなく、そういった理由から使われなくなったのだろうから、そういった点からすればはっきり言って欠陥建築と言ってもよかった。
車庫だったところは今は100の椅子が展示されていてガイドの女の子がひとつひとつこれは誰の何年の作品でどうだこうだと説明するのをみんな感心して聞いていた。全部終わった後に僕の隣にいたおじいちゃんが手を挙げて「すいませんもう一度全部説明してもらえないですか?」とボケたのにおばあちゃんがゲンコツで突っ込みを入れたのを見て僕は爆笑してしまった。なぜか笑ったのは僕だけだった。