バーゼル

crz_joe2004-07-21

バーゼルの公園で目が覚める。途中雷雨があったりガラの悪い連中が遅くまでうるさかったりしたけど、意外と眠れるものだと僕は思った。僕は自分の睡眠力にはつくづく感謝する必要があるなと思った。
それでもまだ6時で僕は駅のベンチで持参のトーストにヌテラを塗って食べ、とりあえず場所のハッキリしているシグナルボックスと車庫を見に出かける。コンクリートのはこの上にガラスのボックスが繰り返される車庫の様が、周辺の線路や電車のリフレインと相まって楽しい。市内に出るとインフォメがやっと開いて、僕はそこで地図と建築リストをもらい、ポコポコがパカパカしたH&deMのスタジアムを横目にマリオボッタの美術館へと足を伸ばす。ボッタにしては軽快さを感じさせるかわいい屋根と美術館の前の芝生の緑によって一層映える赤茶色い石張りの仕上げがすごくいい。
しかし開館までの30分が待てずに結局これをスルーして、郊外のリーヘンという村へ向かう。目的はピカソ、モネ、クレー、ミロなどなどを擁するレンゾピアノの美術館だったが、ハイテクの屋根以外は至ってシンプルな構成がつくりだす空間が展示物以上に良かった。完全な自然採光のみの展示室なのだが天井高7〜8mはあろうかという真白な壁と屋根で調光されて入ってくる静かな光がものすごく贅沢な空間を作っていた。僕もモネの大作が1枚だけかかっている広い部屋でゆったりしたソファに座りながらついうとうと。
市内に戻って今度はH&deM展を見に彼等の最新作でもあるSchaulagerへと向かう。OMA展に対抗しているかのように歴代の模型が並んだ展示も良かったが、蛍光灯の延々と繰り返されるインテリアも抜群にかっこいい。
あらゆる面をデザイン対象ととらえてやり尽くしているというのが彼等の空間や模型から見られる印象だった。そして精巧なディテールと緻密な手間を要して建築本来の持つ重厚さをあらゆる手法で以て消そうと、もしくは消そうとした痕跡を残そうとしている。この首尾一貫した姿勢に僕らはひかれるのだ。
しかし、同時にこれだけ閉じられた空間でいろいろな作品を見ると、彼等の作品に内閉的な質を見いだせないわけでもなかった。コンテクストと表層の相関関係が弱くて表層が引き蘢っているみたいなのだ。
僕は再び町に戻り、リストと地図を片手に実際に更にいくつかの彼等の作品を見て回った。体育館をはじめとしてかなり初期の作品も見た。どれも質は高かったが印象は変わらなかった。