ヴィンタートゥーア〜ズューリッヒ〜ルツェルン〜グリンデルヴァルド

crz_joe2004-07-22

途中めの覚めるような豪雨の音が、今日はとまって良かったと思わせる気持ちのいい朝をユースで向かえ、僕は2日ぶりにまともな朝食を取る。駅へ向かい一路ヴィンタートゥーアへ。
この町は美術館の町として成り立っているらしくインフォメでもらった地図も美術館ガイドになっていた。目的はギゴン&ゴヤー。白く高い壁にのこぎり状の天窓からの光が影を落とすインテリアがものすごく奇麗だった。Karim Noureldin http://www.artnet.com/artist/12678/Karim_Noureldin.htmlトというアーティストの展示がまたよくて、彼は真白な展示空間をキャンパスに見立てその部屋のパースペクティブが失われるようなドローイングを書きなぐるインスタレーションをやるのだが、僕はふとH&deMのやっていることもこれに近いのではないかと思った。つまり、建築が従来持っていた空間の堅さを表層によって消そうとする試みだ。
再び僕は列車にのり、12時過ぎにズューリッヒに着く。ここはかなり駆け足でカラトラヴァの駅とコルビュジェセンターを回る。初めて見る鉄骨のコルビュジェはかなり新鮮でしかもプロダクトっぽくできていて好みだったが入れないのが残念だった。
湖で泳ぐ人々を恨めしげに眺めながらルツェルンへ。ヌーヴェルのつっぱりは実に写真写りの悪い建物で嬉しくない。H&deMをさんざん見た後なので、軒裏の素材と反射にもう少し凝っても良かったのではないかと思う。アルプスが背景にのぞきはじめている町もかなりよくて、僕はこの日初めて旧市街をゆっくりと見て回る。
再び列車に乗るとここからは世界の車窓からな風景。急な山並をゆっくりと列車で上っていく。見下ろせる緑の草原にぽつぽつとレイアウトされた小さな家が夕日で長い影を落としている風景がたまらない。オレンジ色に染まったアルプスの岩肌もだいぶ近付いてきた。
自転車を乗せていた乗客が何人かまとめて降りたのが峠の合図で、ここからはキーという乾いたブレーキ音が森の中にこだまする。列車はまさに際立った高い山に挟まれた谷底のようなところに下りて、僕は風の谷のことを思い出す。列車は更に進んで目の前の草原は湖へと変わる。夕凪が静かに周囲に濃い影を落としはじめていて、湖面と山腹がほとんど同じ青緑に塗られていて、微妙なタッチの差だけがその違いを伝えている。インターラーケンというところで乗り換えて更にグリンデルヴァルドまで上っていく。夕日もくれるような遅い時間だったので乗客はその車両に僕一人だけで、静かに迫ってくる雪を未だたずさえた岩山を見つめながらふと、スイスに行きたいと言っていた母がまだ元気なうちにこの風景を見につれてきてやりたいなどと思った。