アルプスの少女俺

crz_joe2004-07-23

朝起きるとスコールの最中で夕べははっきり見えていたアイガー北壁は雲の中に隠れてしまっている。仕方がないのでゆっくりとユースの朝食をとり、雨が上がるのを待った。飯を済ませると程よく雨はやんでいて、僕はゆっくりと町を下りロープウェー乗り場へ向かう。西からの青空を待ちながらゆっくりと町を下りていく。片道30chfのロープウェー乗り場について空を見上げると西から半分にはもう雲のない青で、僕は30分それに揺られる。途中からんころんと楽しげな音が緑の傾いた草原に響き渡る。
牛だった。牛の首のでっかいカウベル鳴っているのだった。草を食らうというルーティンがものすごく楽しげな音を奏でているというそのギャップが僕にはおかしかったが、しっぽを優雅に揺らしている牛たちを見ていると、彼等もこれで結構幸せなのだろうと思えてきて、僕はもし次に生まれ変わるならアルプスの高原で草を食らいながらカウベルを鳴らす牛としてスイスのティピカルな風景の一部に成るもの悪くないなどと思った。
たどりついた標高2300mの稜線の向こうは切り立った崖になっていて、1000mくらい眼下に小さな村が見える。その奥にはまた500mくらいの崖がそびえ立っていて、その上にまた広がる高原にもポツポツと家が点在するのが見えていた。
同じ山をたくさん抱えた国であるのに、どうしてスイスでは育った高いところに住みたいモチベーションが日本では育たなかったのだろうか、などと思いつつそこから2時間近く登山道を歩いてクライネシャイドゥックまで向かう。アイガー北壁にももう雲はなくまだほとんどが雪に覆われたユングフラウホッホも奇麗に見えている。僕は両山とその間を上っていく登山列車を眺めながら昼食を取り、アルプスの天然水を飲む。
4000m近い山頂への登山列車乗り場にはものすごい数の日本人ツアーがいてうんざりしたのと、ネタとしては往復102chfは高すぎるので僕は下山することに決めた。いつの間にか雲が出ていて、ポツポツと雨が降り始めていた。