緑地を紡ぐ

前日大学から勢いで後輩のチャリに乗って銀座まで行ってしまって、結局乗って帰っちゃったものだから、今日それで大岡山まで行かなきゃならなくなったのを、どうしようと途方に暮れかけたけど、自転車という非常にアナーキーな乗り物で、普段は地面の下にいて見ることの出来ない毎日の移動距離をこぐのに、実際に何をつむぐのがもっともらしいかと言う話になれば、僕は非常に無目的化した都市の緑地がいいんじゃないかと思って、地図を片手に昼過ぎに家を出た。
↓こんな感じに東から西。

そもそも僕の住む地区は東京都の災害時避難場所になっていて巨大な公園が過剰にある。
大学に入ってきてから越してきたこの場所を僕は結構気に入っているが、
僕自身は15階のマンションが地盤の液状化に耐えられるか分からないため避難場所へたどり着けるかは疑問だ。
でもほら、カヌーとかしちゃて、いいでしょ?

まずは緑道を南下。
この辺りは昔の運河の名残がたくさんあって荒川と隅田川の間だけでもかなりの水路がある。
正直そんなとこで釣りしなくてもと思う。

そこから一気に西。東京都現代美術館を見逃して清澄庭園まで。
この辺りは寺が多くて晴海通りから一本内側にはいると
途端に木造家屋下町の雰囲気。

やっぱり寺が多いところ大きな開発がないから雰囲気が残っている。
東京のイメージってメイドイントーキョーみたいな建物とか高速道路とか
大規模開発とかそういうものに置き換わっちゃった気がしてるけど
実際にはこういう昔の江戸とまでいかなくても
大正昭和のモダンな時代を思わせるような雰囲気をもつ場所が
寺が集まっている周りにはよく残っている。
とりあえず富岡八幡宮で休憩。

再びペダルを踏んで晴海埠頭の手前、東京海洋大学に忍び入る。
九大を思わせるような古い建物と豊富な緑の雰囲気がよい。
門前仲町当たりの下町に下宿して通うのだろうか。
悪くない大学生活だと僕は思った。
芝生の海に座礁した一隻の船。

月島を抜けて勝どき橋を渡ると築地に出る。
たまに来るので浜離宮は横目でスルーして浜松町駅前。
いっつも気になっていた芝離宮にはじめて踏み入れる。入場料150円。
浜離宮よりもだいぶ狭いけど人は少ないしよく手入れされている庭園の雰囲気はいい。
ビルに囲まれてて大きな影が緑にコントラストを与えている。

僕はベンチに座って弁当を食べながら変なカップルが青姦しにここにやってくる妄想に駆られていた。
囲われて人が少なく、広くて適度に死角の多い庭園で、しかも高いビルに囲まれて
なんとなく見られてる感がある。絶妙なんじゃないかとふと思ったのだ。


再び自転車にまたがり山手線をくぐってまっすぐ増上寺へ。
ここも地図で見ると芝公園と合わさって大きな緑地をつくっているのだが
あまり周囲に還元されてない感じ。

広尾方面に向かい、三田の丘を登る。
頂上にある緑地は綱町三井倶楽部
実は僕は昔中に入ったことがあるのだが、塀を伝って坂を下るとまあなんともでかいこと。

固定資産税とか大変だろうにと無駄な心配をしてみる。
白金方面に抜ける途中にも白金竹友クラブという塀で囲まれた巨大な緑地がある。
竹中工務店の所有らしい。
坂の上り下りを繰り返すうちに白金にも寺が集まった一画を発見した。
寺が集まると途端に昭和初期のような雰囲気が出てくる。

見下ろすと墓はすごい密度だ。

そのまま目黒通りに入って科学博物館付属自然教育園の横を抜ける。
庭園美術館のあるところだ。
入場料が300円もするのでここは素通り。
でも地図を見るとかなり大きい。
東京は緑地が少ないみたいに見えるけど
大きい緑地のほとんどがゲーテッドなのだけで
実際は結構緑地があるよな。


目黒で山手線の外へ出て目黒不動尊から林試の森公園を眺める。

入ってみるとミュンヘンのイングリッシャーガルテンを思い出させるような薄暗さ。
ものすごい森だ。
そこから目指す最後の緑地大岡山まではすぐ。
僕は講演会に間に合うようにペダルを踏み続けた。