家に記憶はあるか?/保坂和志(昭和住宅メモリー)

昭和住宅メモリー―そして家は生きつづける。 エクスナレッジムック―X-Knowledge HOME特別編集
(以下引用)
家でも会社でも、あるいは映画館でも居酒屋でも、私たちはそれぞれの空間に見合った所作をしている。私たちはその所作を「自分の意志でやっている」と思っているけれど、「自分の意志」より前に空間があって、空間によって意志することの大枠が決められている。旧家でなくて新しい家でも、訪ねてくる人がみんな横になって体を伸ばしたくなってしまうような一隅があったり、「この部屋でしばらくぼおっとしたい」と感じたりするとしたら、それは建物の力なわけで、<カエルの記憶>にちかい<家の記憶>の入り口に立ったということになるのではないか・・・と思う。