東京から考える/東浩紀・北田暁大

東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)

東京をテーマとした若い哲学者と批評家の対談。
郊外化していく都市、ジャスコ化していく高級住宅街のような都市の現状から、これまでのような経済と文化度の足並みがそろっていない社会の現状、傾斜のみがある経済格差を見いだし、安全で安心な人間工学的テーマパークが席巻していく状況を、東さんを中心に肯定的に見ている。
一方で北田さんは下北沢に対する愛着からノスタルジーの話を持ち出すが、東さんはこれを切り捨ててもっと大枠の、慣習の大元となる世代的生産、生殖の話に移っていく。
個人的にはこの世代的生産の話に一番共感を覚えた。
でも僕は確かにノスタルジーと郊外化が同時にあるのが現在の都市の状況だと思うが、東さんが考えているように郊外化の大元になっているのがそういう世代的生産、生殖(安全、安心)の問題だとは思わない。
下手にナショナリストと思われても嫌だけれど、ノスタルジーとネイションを引き延ばした先に、最近の大規模再開発の根底になるべき何かがある気がしている。
そういうのってもしかするとものすごく微分された状態なんじゃないかと漠然と思っていて、そう思うと設計手順とか材料とかに落ち込んでいくことなのかもしれない。
現在の都市と社会の関係を考える上ではよい一冊。