インドが2 デリー→アーグラー



早くに目が覚めてしまったので朝食を求めて街をさまよう。入った食堂でメニューをとってくれた小学生くらいのボーイの男の子はしばらくして学校の時間なのかリュックを背負って外に出た。昔は日本もこんなだったのだろうけど、ふと彼の遊ぶ時間について考えてしまう。


チケットをとろうと駅へ向かうと、窓口へ行かせまいとするインド人たちの攻勢がすごい。ガイドブックには駅の2階に窓口があると書いてあるのだが、工事中だとかチケットがないと入れないとか難癖をつけては違うところに連れて行こうとする。まあそういうのには慣れっこなので、適当にあしらいつつ階段を探すが、こっちの人がひどいのは平気で腕をつかんで無理やり引っ張っていこうとすることだ。早くも大声で怒鳴り散らす羽目になったが、ファックユーと逆ギレされた。もはや相手の目的もなんだか分からない。やれやれだ。


無事に午後3時発の、次の目的地アーグラー行きのチケットを手にし、オールドデリー方面へ出る。街はとにかく汚くて、いろいろなところで身体スケールがものすごく小さい。座席の着いた三輪自転車であるタクシー代わりのサイクルリクシャーは5cmスレスレのところで対向車や歩く人をかわしていく。あたらないのが不思議なくらいだ。
かと思うと訪れた城跡、ラール・キラーはものすごくでかい。10m以上の高さの塀が、一辺だけでも延々と2kmはつづいていく。こうしたものすごく小さなスケールと大きなスケールの極端な並置がインドを特徴づけていると僕は思った。信号待ちをしている交通を見ても、バス、乗用車、トラック、バイク、自転車、牛、馬ととにかく混じり合っているのだ。



電車に乗っていてもそうで、遠景に近代的な工場施設が見えているその近景ではスラム化した煉瓦造りの集落のさらに裏側として人々の排泄行為が目に飛び込んでくる。
電車やリクシャーの上から眺めているだけだとこの国は自由で生きることに純粋に見える。ただ原始的に見えるその一方で、生まれながらに負けていて10億の中に埋もれていくしかない人がたくさんいるのをさまざまな風景の中に感じる。



格差社会とは予想していたけどこれはカーストすぎるなと僕は思った。でもそれがいろいろな風景を生んでいる。きっと貧富の差は多様な風景を生み出すのだ。
中産階級を下手に底上げしてそこら中に無味乾燥な風景を生んでいるどこかの国よりは少なくともよっぽど魅力的に写る。