ネパールの1 スノウリ→カトマンドゥ


朝早くにバスが出て北上する。周囲の建物を見ていると少しずつ屋根型や軒が出てきて、それが雨量の増加を物語っている。バスは川沿いの田園風景を横目に延々と走り、今にも崩れそうな集落がときどき姿を現す。
こういうプリミティブな風景が好きなのだと僕は改めて思う。そういう風景の中にはデザインと機能の密接な関係があるからだ。揺れるバスの中からも構わず僕は一眼のシャッターを切り続けた。




思うにデジカメの一番つまらないところは写真のできあがりを見てすぐに消すことが出来るところにあると思う。現像するときのワクワク感というか奥行きがないのだ。
話がインドからそれるけど今の世の中はたいていの者はスピーディーでその分奥行きが浅くできている。たとえばものすごく簡易に手に入る衣服がどこでつくられてどこで加工されているかなんて知らなくても困らない。そういう一方で自家栽培有機野菜レストランみたいなLOHAS的な方向性はスピードがゆっくりしている分そこに奥行きがある。
それってカメラに置き換えるとそのままデジタルとアナログの差で、時速20kmくらいで坂道を上るバスの上から、デジイチでシャッターを切っては消しまた撮っては消しとしているとこのカメラだけが異様なスピード感を持っているのがなんだか気持ち悪いと僕は思った。



バスは結局カトマンドゥ市内でひどく渋滞し、暗くなってから目的地に着いた。イスラエル人の女の子とタクシーを乗り合いして中心部に向かい、停電で真っ暗な街を歩いて、インドで働く後輩のオススメというホテルを探す。
フロントで2年くらい前にバスから肘を出して対向車に当たって骨折した女の子を覚えているかと聞くと、彼らはちゃんと覚えていて彼女は今もインドにいるのかと聞くからムンバイで働いていると教えてあげると愛想の決してあまりよくない彼らが少しだけ笑った。