ネムルバカ/石黒正数

ネムルバカ (リュウコミックス)

ネムルバカ (リュウコミックス)

最近気になるマンガシリーズ。
それでも町は廻っている」でブレイクした石黒正数の1巻読みきりマンガ。
ミュージシャンを目指す先輩と何をしたらいいかわからない私の生活を描く。


既視感があるのは保坂和志のプレーンソングとか鈴木清剛の小説に近いからなのか。
最近ソラニンに代表されるようにモラトリアムを描いたマンガには名作が多い。
小説が担ってきたジャンルがマンガによって開拓されているということだろう。


話の中に「駄サイクル」という言葉が出てくる。
アーティストが集まりお互いどうしを褒めあうアーティストカフェについて
評する先輩の言葉として。


その定義とは
「需要と供給が輪の中で成立してしまうことで、前に進まない駄目なサイクル」


なるほどなと思った。
ここ最近僕はずっとある人に
「批評からは何も生まれない」と言われたことが引っかかっていた。
でも批評とはこの「駄サイクル」に陥らないためにこそあるんじゃないかと
これを読んで思ったのだ。


世の中が共感を求め、メディアが共感を操作する時代に入ったと思う。
yahooニュースにコメントを書けばそれに対して誰でも
そう思うかそう思わないか(共感するかしないか)評価できる時代になっている。


その一方で炎上を恐れて当たり障りのあることが言いにくい時代になっているとも感じる。
顔が見えない分、インターネットは批評がしにくいメディアだと言える。
それでも批評をしない、内輪でおべっかを言い合うコミュニティを
受け入れてしまって良いのかというのが、僕が最近強く危惧すること。