グランシップ/磯崎新アトリエ
ちょうど竣工してから10年建つ、静岡という小さな街には明らかに不釣合いな巨大建築。
文字通り巨大な戦艦のようにそびえたっている。
衝撃的だったのが大ホール。
昔新建築で見て嘘でしょうっていうくらい壮大なホールが
開放されて巨大な屋内広場となり、子供たちが走り回って
紙飛行機を飛ばしたりしている場所として使われているのだ。
このもはや笑うしかない現実が僕らにとってどういうことを意味するのか
考えながら館内をいろいろ歩き回る。
予定を見る大ホールが有効に利用されているとは思えないけど
10年建つ建築とは思えないほどきれいだし、
ホールは使われてなかったにしろ
いろいろなレベルにあるロビーは工作教室のようなイベントによる人であふれていた。
いわゆるハコモノという批判がもってこいの建築なのだが
きっと役所の人間も建物を使うことに必死に知恵を絞っているのだろう。
ホールではなくて公民館のような使い方にしか見えなかったが
僕には割りと幸せな建築のように見えていた。
建築にはハコモノとしてだけでも結構な価値があるのだとそれを見て思った。
社会においてディベロッパーやコンサルタントと呼ばれる人たちがしっかりしてきたことで、
昔建築家が担ってきた役割をそういう人たちがサポートするようになって
じゃあ今何を建築家はデザインすべきなのかという問いのひとつの答えが
僕にはそこにあるように思えた。
もしこの建物が非常に普通のデザインの建物だったら
きっとこれだけ人は集まってきていない。
そして世界の最新建築ニュースを見る限り
世界中が多分そのことには気づいている。