スティル・ライフ/池澤夏樹

スティル・ライフ (中公文庫)
87年の芥川賞作品。気に入ったのでいくつか抜粋。
「地球の表面の形っていうのは全部何かが降ってきて、それが積もってできたんじゃないかって気がした。(中略)山になっているところには山の原素が降り積 もり、熱帯雨林にはみずみずしい緑色の、たぶん葉緑素をたくさん含んだ熱帯雨林の原素が降って、砂漠には砂や礫や岩が音もなく降って、それで地形ができ た。」
「これ(逃亡生活をさして)は草食動物の暮らし方なんだ。巣を作らない。行く先々で身辺にあるものを食べる。こちらから獲物を追うようなことはしない。なるべく周囲に溶け込む。急激な行動で人目を引かない。肉食動物と対峙するような事態は絶対に避ける。」
日常に新しい視点を持ち込む小説家って好き。建築家もだけど。日本人は草食動物かなあ。