サッカーが越えた民族の壁/ 森田 太郎

サッカーが越えた民族の壁――サラエヴォに灯る希望の光
 

もし僕が中学校や高校の教師だったら間違いなく夏休みの課題図書にこの1冊をあげるんじゃないだろうか。77年生まれの森田氏は日頃からNGOの活動に従 事する傍ら、そこで得た経験を通じてサラエヴォの異なる民族の子供たちを集めてサッカーチームをつくり、それによって民族紛争によって現れた民族間の厚い 壁を越えて交流を図ることができるんじゃないかという夢物語を描いて奨学金をもらい、実際にそれをやり遂げてしまった行動力のある人である。本に書かれて いる紆余曲折の日々のことを僕は彼本人からそのとき聞いたのだが、ちょうど旅の途中で道連れになった人にもらってそのとき読んでいた本が木村元彦の「悪者 見惨」というユーゴスラビアの紛争とその中で歯痒い思いをしたサッカー選手たちを描いた本(名著)だったおかげで、僕は彼の話がとてもよく理解できてそれ はある意味で運命的だなとすら思えた。旅の終わりを飾るにしてもちょっとできすぎた話じゃないかと。。