サッカーが越えた民族の壁 森田 太郎  続き

サッカーが越えた民族の壁――サラエヴォに灯る希望の光
紆余曲折ありながらもサッカーというひとつのスポーツ を通じてはじめは毛嫌いしていた民族同士の融和が少しずつだけど起こってきたと熱く語る森田氏の話を聞いて、僕は正直にすごいと思った。その頃の建築 界 では建築の死とか終わりとかが盛んに叫ばれていて、僕は確かそのとき君のように民族融和とまでは行かなくても社会の諸問題に対して空間の側からアクション を起こせるような建築を夢見たいんだというような話をしたと思う。ただ建築界は今リアリズムの中にあって理想主義は絶望視されているんだけどというような ことを言った。僕には彼が理想主義的過ぎるように思えたからだ。彼は言った。国際政治学も今全く同じ現状にあると。それは国連やNATOなどの組織が有名 無実化してアメリカ一国の正義によって国際問題が左右される現状を指していた。そう言ってまあでも歴史は繰り返すものだからねと2人で笑った。僕は4月か ら建築界のリアリズムを牽引する先生のところで学ぶことになっているのだと言った。その中で自分にできることを探すつもりだと。そう言って成田で別れた。