文化庁メディア芸術祭

crz_joe2006-03-04

土曜の会社をさっさと引き上げて毎年楽しみにしているメディア芸術祭へむかう。
毎年規模が大きくなって訪れる人も増えている気がするのは、
社会がこういう一見何の価値もないものにどんどん関心を寄せるようになったという構図の表れだと思う。
毎年アニメやらCGやらそれぞれのメディアの本質や新しい可能性をうまく引き出している案が多いと思うのだが、
アニメーション部門で大賞をとっていた榊原澄人さんという人の作品ではわずか20秒かそこらでサイクルする「退屈な繰り返し」の中にものすごくいろいろなデザインがされていて興味深かった。
たとえば、女の子が教会に入ったかと思うと花嫁姿になって出てきて車に乗る。
乗った車は一端画面から消えるけどすぐに戻ってきて乳母車を押す女性を下ろして、その女性は見ていると手押し車を押すお婆さんの姿になって画面から消えていく。
こういった一連の流れが完全に時間の流れを無視して同時進行に繰り返されるアニメとして起こっているんだけど、順を追ってみていくことで流れが見えていく。
繰り返しの中に時間の流れを発見させるという奥行きが絶妙だと思った。


同じ「時間」の発見ということではクロノスプロジェクターという作品でスクリーンに映った写真に触れると時間軸が変わるというものがあった。風景写真に触れることによってそれが夜景に変わったりするもので、時間を手で獲得できるようなインタラクションがすごく新鮮。

ただ僕が一番興味を持ったのはHIFANA"WAMONO"というアニメーションで、嵐の漁に出た親父が(ここまでは実写なのだけど)アニメなのをいいことにやりたい放題で、いつの間にか魚をとらずにBGMを奏でることに熱心になって、最期は魚の口の中でお祭り騒ぎを繰り広げるというやつで、僕はこういった暴走ものに非常に共感をもつ。


コンペをやっているときもしょっちゅう言われていたのだけど、僕は頻繁に暴走を繰り返す。
ひとつの作業をしているうちに、その中に隠されているある本質を発見してそれを暴走させ始めることがよくある。
オーバードライブとも違う、ほとんどアウトオブコントロールな状態。
実際それでどうなってるかというと笑いをとっているだけなんだけど、
それがもう最近は非常に楽しくて病みつき。
これをひとつの建築の形まで昇華させたいというのが僕の最終的な野心かもしれなくて
そういう意味ではこういう暴走者の集まりのような展覧会を見るとウキウキしてしまうものだ。

 
展覧会は恵比寿の写真美術館で明日まで。行ける方は是非。オススメ。多分激混むけど。