加山又造展 @新国立美術館

crz_joe2009-03-01

昭和を代表する日本画家、加山又造の展覧会。


これだけまとめて作品を見るのはもちろん初めて。


いわゆる日本画、屏風画だけでなく
初期の動物を描いた表現主義的な絵画も多く展示されていて
これを見ているとこの人がどう世界を捉えていたのかがよくわかる。


同じ動物でも背景が違うと動物を描くタッチが変わっていて
その完成された世界を見ていると
動物と背景の間にたくさんのフィードバックがあったことを想像できて楽しい。
裸婦を描いた一見白のベタ塗りに見える背景にも細かなテクスチャがあって、
西陣織りの図案家の息子らしい、この世界にはテクスチャがあふれているとでもいうような世界観が垣間見える。


見ていてふと思ったのは
もし仮にタイムマシーンなんかができてしまったら
この日本画というジャンルは
あるいは芸術というジャンル全体かもしれないけど
写真技術の発展によって写実主義の絵画が失われてしまったように
成立しなくなってしまうのかもしれないと。


「夜桜」という作品を見ていて僕が何となく感じる懐かしさというのは
僕がこの画が描かれた何十年か昔の風景に意識を接続して得ているのかもしれないし
あるいは屏風に描かれた桜という実体がもっと長期的に日本で生活しているうちに刷り込まれた漠然とした昔に(これを早く言葉で定義する必要があるけど)接続して得ているのかもしれない。


よくは分からないけど
いずれにしろ仮にタイムマシーンなんかができてしまったら僕が意識の中で時間に接続して得るこの懐かしさは崩壊してしまうのではないかと
そう思ったのだ。


まあもっといろんなものが先に崩壊するんだろうけどw


写真は一番印象に残った「月光波濤」
割れた波の迫力がすごくて
月にかかる雲の水ににじんだみたいに見える表現に
波の水しぶきが画にかかってしまったみたいだと思った。


そこに立ち現れる4次元的な奥行きを楽しむことが
今の僕の一番の楽しみ。