1Q84 BOOK2 / 村上春樹
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/05/29
- メディア: 単行本
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1を読み終えて思った結末から
ほとんど予想通りだったとも全然見当違いだったとも言えるけど
読みながら、ああ村上さんてこういう作家だったとしばし顔をしかめながら
読むのはとても楽しかった。
ちなみに僕のベストは依然として「風の歌を聴け」です。
物語の森では、どれだけものごとの関連性が明らかになったところで、明快な解答が与えられることはまずない。(中略)物語の役目は、おおまかな言い方をすれば、ひとつの問題をべつのかたちに置き換えることである。そしてその移動の質や方向性によって、解答のあり方が物語的に示唆される。
と示唆されてましたwかなり早い段階で。
「僕らの記憶は、個人的な記憶と、集合的な記憶を合わせて作り上げられている。(中略)その二つは密接に絡み合っている。そして歴史とは集合的な記憶のことなんだ。それを奪われると、あるいは書き換えられると、僕らは正当な人格を維持していくことができなくなる」
いい文学というのは僕らが正当な人格を維持していられる社会の微妙なバランスを揺るがすためにあると思う。昔旅先でノルウェイを読んで人格崩壊しそうになったのを思い出す。確かあのときはフランスのボルドー地方にいて、ホテルにこもってワインボトルを2本空けなきゃならなかった。
時間そのものは均一な成り立ちのものであるわけだが、それはいったん消費されるといびつなものに変わってしまう。ある時間はひどく重くて長く、ある時間は軽くて短い。そしてときとして前後が入れ替わったり、ひどいときにはまったく消滅してしまったりもする。ないはずのものが付け加えられたりもする。人はたぶん、時間をそのように勝手に調整することによって、自らの存在意義を調整しているのだろう。
世界は自分を中心に都合良く回っている。そして正気はいつも非常に危ういバランスの上にある。
それに気づいて正気を保っている人とそうでないでも正気を保っている人がいるのが文学が必要な理由のひとつなんだろう。
説明されないとわからないのであれば、説明されてもわからないのだ。
つまりこの物語は非常に説明的に文学の消失を嘆いていたというのが僕の思ったところ。
ほうほう。