ハーモニー/伊藤計劃

全ての人に健康の異常を感知し知らせる医療分子が埋め込まれたことで病気のなくなった、酒もタバコも禁じられた超健康管理社会、医療経済を核とした福祉厚生社会を描く。人々の情報は常に開示され、常に社会にどれだけ貢献してるかを表示される、誰もが他人を気遣い、親密な社会的調和が目指される社会。
そんな社会の息苦しさとそうして見えてくる真の調和が行き着くところが何かを描いていく。本当に面白いです。
ユートピアとディストピアの境界線はいつもものすごく危うい。

酒やタバコが精神に及ぼすプラスの影響を考えると、健康管理社会＝生命主義があり得るかはいまいちピンとこないけど、ネット上のニュースに対するコメント欄とかを見ていると、社会的調和が目指される社会というのはあり得そうな気がしてしまう。
最近の尖閣問題とか少年への死刑求刑のニュースへのネット上のリアクションを見ているとほとんど中国北朝鮮と変わらないじゃないかと思ってしまう。まあごく一部の偏った層なんだろうけど。
なんとなく社会が共産主義的に向かっていくことに対し、僕らちゃんと個人の自由を踏みとどまれるだろうか。

ハーモニー (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)