メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン@森美術館

crz_joe2011-10-16

地震前から企画されていたにしても、とにかく非常にタイムリーな展覧会だったと思う。ピースセンターから始まる展示が印象的。焼け野原になった都市に菌や細胞が増殖するように建物が増えていったのを目の当たりにした世代だったのだろう。
そこに原子力の平和利用みたいな話がかぶってきた背景があって科学としての建築や都市計画としてメタボリズムが夢想されたのだと思いを馳せる。スプロールしていく新陳代謝でなく、それに構造を与えてコントロールしたいと思ったのはいかにもこの時代の「建築家」らしいと思った。


一番大きな収穫は栄久庵憲司の関わりを詳しく知れたことじゃないかと思う。栄久庵さんがいることで今と比較した時の当時の建築家の異質さが際立って見えた。
栄久庵さんのいくつかの案を見て、これだけがツリー構造を持っていなかったという事実が僕の中で決定的だった。生物の新陳代謝を考えるとき、骨が新陳代謝しないで肉だけが入れ替わるということはない。栄久庵さんの案だけが現代的で(民主主義的で)、スター建築家の案は権威主義的に僕には見えた。


都市はツリーではないという宣言は都市計画そのものを否定するものではなかった。にも関わらず建築家は新しい都市計画を提案することを半ば諦めてしまった。その理由のひとつがツリー状にしか展開し得ないインフラのシステムのためだったとして、今後スマートグリットが新しいインフラの可能性を提示しうるとすれば、都市計画も新しいメタボリズムの可能性ももう一度提案しうるのではないかと思う。




空間のあり方へと見方を変えるとメタボリズムは建築家にとってピロッティと屋上庭園の具現化だったようにも見える。最近は優れたピロティ建築っておもいつかないけど、これは僕にとっては膨らましたい建築言語。