原発社会からの離脱/宮台真司+飯田哲也

正しいことが書いてあるだけにやるせない。以下引用

レーガンサッチャーあたりで生まれてきた市場原理的なものも、スウェーデンなどの北欧社会は市場メカニズムだけは上手に取り入れながら、しかし、市場に任せておけばいい、という自由放任的なものにするのではなくて、いわゆる炭素税を燃料の価格に組み入れれば、あとは市場メカニズムで石炭が減るというように、経済のメカニズムにきちんと「環境」を入れて、あとは市場にゆだねるということをしました。<中略>こうした知的な積み上げが、日本ではゼロといってもいい。二年ごとに新しく来る役人たちが、すべてゼロから始める。コンサルタント会社はコピー&ペーストで報告書をつくり、結論に合わせる「合わせメント」というでっちあげアリバイ文書しか作れない。北欧との圧倒的な差を、いま改めて痛感します。(飯田)

マスメディアはスマートグリッドに飛びついてしまいますが、それ以前に、いますぐ導入できる有効策がたくさんあります。スマートグリッドで全部解決できると考えると、逆にスマートグリッドが導入できなければ何も始められない、という論理になってしまうので注意が必要です。太陽光や風力発電導入によってもたらされる変動を、電力会社が全体の出力調整で対応できることを認めさえすれば、自然エネルギーはすぐに10倍導入可能になります。彼らは「系統に影響がある」
と実質的にウソをついて封じ込めてきた。スマートグリッドという口実で今日明日にできることが放置されてしまっている。(飯田)

ソフトバンク基地局の数で言えばauやドコモより多いそうです。でも、なかなか繋がりにくいのは、電波が遠くへ届く800メガヘルツのUHF帯域がドコモとauに充てられていて、ソフトバングは2ギガの帯域しかもらっていない。だから電波の指向性にハンディがある。
電電公社第二電電という二つの国策会社のあいだに、純粋な民間企業が割り込んで嫌がらせされている、という昔ながらの構図がそのまま温存されているのです。(飯田)

いきなり環境問題から入ると何も動かなくなるので、そのような形式をとったんだと思います。まず自治を取り戻す。共同体自治の形を作ってから、環境の問題をそこに実装させていこうという戦略だと思う。飯田さんがサムソ島を参考にして祝島でやっておられるように、エネルギーを変えることから自治を再生するという方向と、自治を再生することでエネルギーを変えることの制作的な現実性を上げていく。両方の可能性があると思います。(宮台)

まず、東京電力は全ての財産を出す。次に株主で、株価はゼロに減資して上場廃止する。それに融資した銀行は、貸し手責任の原則から最速を放棄するべきです。それで損害賠償をしてもなおお金が足りなかったら、「原発埋蔵金」を払う。これは、「再処理等積立金」という、まったく使うあてもなく使う必要もない悪貯金が2.5兆円もあり、さらに毎年5000億円も積み上がってゆくものです。電気料金への転嫁は完全に切り離して、東電資産管財人のようなものを作る。
経営者はさておき、実働部隊さえ働いてくれれば電力供給についての問題はまったく起きません。ですから、一時期挙がっていた、東京電力を国有化して電力供給を保障した上で、おちついてから、競売することで高く売れれば、その差額は賠償なりに充てることができます。電気料金への転嫁、安易な税金への転嫁は許さないと主張するべきです。(飯田)