ヴァレリオ・オルジャティ展@国立近代美術館

crz_joe2011-11-23

スイスの建築家ヴァレリオ・オルジアティ(こっちの呼び方のが馴染み深い)展。


非常に面白かった。
それぞれスケールの統一された平面図(1/100)と抽象的な模型(1/30)に加え、レファレンス写真が会場内にばら撒かれており、その間を巡っていく展覧会。


面白いのはどれとどれが対なのか曖昧になっているところ。
ツガイを探すように模型と図面の間を身体的に行き来しながら、脳内で平面的なものと立体的なものを行き来する。
まさにこの行為こそが建築設計行為そのものなのだ。


さらに散りばめられたオルジアッティのエッセンスとも言うべきレファレンスを巡りながら建築模型に立ち戻っていくと、どんなバックグラウンドがあってどういうアウトプットがあるのかをぼんやりと知ることができて、そこに良質な美術展を見る時と同じような奥行きが脳内に立ち現れる。


平面図を二次元の情報源、模型を三次元の情報源として、仮にいろいろな文化的歴史的背景をふくみ込んだレファレンスを四次元の情報源と呼ぶことにすると、画家が四次元と二次元の間を行き来してモノづくりをし、彫刻家が四次元と三次元の間を行き来しているのに対し、建築家は三種の異次元を横断してモノづくりをしていると言える。


実際はさらにこれに加えて設備や構造や計画といった工学的な話がつきまとうので、その建築のエッセンスのなんたるかは非常に複雑怪奇で曖昧なものになってしまうのだが、こうしてシンプルに示されると、建築家が他のクリエイターと比べていかに凄いかがよく分かる。
(と同時に一般大衆に建築家を理解してもらうのがいかにハードル高いことかを思い知ってしまった。)


実物を示すことができない建築の展覧会が、何を示すべきかということが非常によく分かるいい素晴らしい建築展だった。